安曇野の家:はじめの鍼灸治療院

穂高郷の四季を満喫できる家

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所在地:〒399-8305 長野県安曇野市穂高牧2230-137 710号地

この家は、『東京都現代美術館』や『新国立劇場』などを設計された、故柳澤孝彦先生の設計・施工になるものです。

作品2と柳沢先生-2

先生は松本のご出身。当地の知人を介して紹介いただきました。
美術館や公共建設などの分野で多くの実績を残されていて、規模の小さい民家は引き受けていただくのは難しいのではと思っていたのですが、特徴的な敷地を気に入っていただき、引き受けていただきました。

先生は風貌とは異なり気さくな方で、2003年の初夏、東京からフォルクスワーゲンを運転して現地まで来ていただき、急な斜面を確認のため、飄々と下って行かれた細身の先生の姿が印象的でした。

その後1年半、先生の神田の事務所に足を運び詳細を詰めて、2004年10月に竣工しました。

作品一覧に一目瞭然ですが、先生は主に公共性の高い建物を中心にご活躍されましたので、安曇野の家は結果的に先生の数少ない民家の作品となりました。

余談ですが、ご子息超氏は、1985年結成のジャニーズ所属アイドルグループ「忍者」のリーダーで、その後俳優として活躍されています。(びっくりしました)

軽井沢の工務店、草津の大工の手になる

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 施工は軽井沢の西武建設、草津の大工に担当いただきました。六角形の建物に寄棟の屋根。棟上げ式には、特異な屋根構造を見学に、少なからずの大工が集まられました。

また壁のパネル材は、木目が揃うよう1枚1枚配慮して貼り付けてあります。室内・外は、大谷塗料社製のペンキVATON FX。黒く見えますが、緑と青を混ぜ合わせた色合いで、単なる黒色と違った落ち着いた味わいを引き出します。

柳澤先生のプロフィール

007profile柳澤孝彦(やなぎさわ たかひこ、1935年1月1日 – 2017年8月14日)は、日本の建築家。

長野県松本市出身。長野県松本深志高等学校を経て、東京芸術大学建築科を卒業後、竹中工務店・設計部入社。東京本店設計部長を務めた。
1986年の新国立劇場(当時の仮称:第二国立劇場)国際建築設計競技で最優秀賞となったのを機に独立、同年9月TAK建築・都市計画研究所を設立した。東京都現代美術館などの公共建築を多く手がけている。
2017年8月14日、前立腺がんのため東京都内の病院で死去。82歳没。

株式会社 柳澤孝彦+TAK建築研究所。Hpはこちら

・作品(竹中工務店時代)
1981年 MOA美術館
1982年 日蓮宗総本山身延山久遠寺大本堂
1983年 大手センタービル
1984年 有楽町マリオン

・独立後の作品
1988年 真鶴町立中川一政美術館 (吉田五十八賞1990年受賞)
1992年 郡山市立美術館
1993年 窪田空穂記念館
1994年 東京都現代美術館
1995年 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館
1995年 三鷹市芸術文化センター
1997年 新国立劇場
1997年 さいたま文学館・桶川市民ホール
1997年 ひかり味噌本社屋
1999年 東京オペラシティ
2002年 高根町ふれあい交流ホール
2004年 芦野温泉ホテル本館
2004年 軽井沢・プリンスショッピングプラザ レストラン
2005年 奥田元宋・小由女美術館
2006年 松本深志教育会館
2006年 一葉記念館
2006年 国立ハンセン病資料館
2006年 新佐久教育会館
2007年 川口町滞在型宿泊・研修施設
2010年 国営武蔵丘陵森林公園中央口センター棟
2010年 国立中央青少年交流の家
2010年 日東光学ショールーム・金子茶房
2011年 国立清水海上技術短期大学校総合実習棟
2011年 湯西川ダム管理施設等
2014年 静岡地方・家庭裁判所富士支部庁舎
2014年 上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館
2015年 新潟県警察機動隊庁舎等
2016年 千葉県警察学校生徒寮

※出典はウィキペディア。リンクはこちら

■建物のコンセプトは「御篭堂」

御篭り堂仲間をよんで楽しく騒ぐための別荘でなく、アルプス登山のためのベースキャンプでもない。小さな家族で静かに日を過ごす、ミニマムコンフォートの家をめざしました。

建物平面図・外観図は、こちら。

・強い下り勾配に、軽やかな存在感の黒い家

斜面からカタパルトのように宙に飛び出している家を実現するためには、基礎をどう打つかがまず問題になりました。不凍土までの深度に、上物をさせるに足る最低限の面積をどう維持するのか、この強度設計は、先生の判断でダムなどを専門とする設計会社に依頼。

こんなことをしていたので、施工まで時間がかかってしまいました。

・大きく、広い箱としての家

敷地は傾斜地約340坪。そこにコンパクトな家を置きたい。メインテナンスの手間が最小で、でも経済合理性だけを追わないこと。具体的には間仕切りをどうするか。

室内を壁で細かく区割りすると、狭い家は「せせこましく」なります。そこで家内は大きな1部屋とする。ただし、寝室と居間のゾーンの分離、ロフトに部屋としての機能を持たせることで、利便性を高める……あちらこちらに先生の工夫がこらされています。

ふすま説明

 6枚の襖戸を閉め切ると、寝室に。単に居間ゾーンとの隔離だけではなく、寝室としての面積を最小化することで、冬場でも充分な暖を得ることができます

 洗面引き戸説明

 トイレ・バスのプライベートゾーンとの遮蔽は、2枚の引き戸で

・夏は向山を借景に、冬は松の枝から飛び散るダイヤモンドダストを

夏・冬の窓

部屋からの眺望に妥協しない。それを遮るものがないよう、柱は最低限に。

静かに向かい山を望んで過ごす、雪の日はダイヤモンドダストが流れていく。そのために窓をどうするか。

最初のコンセプトは、床から天井まで伸びるガラスの戸で、それを左右に開けると、床と外界との間を遮るものが一切ない開放的な空間が現れるというものでした。が、そのような高さのガラス戸を作成するコストはとても高く、かわりに、ガラス戸の手前には、ぐるりとベンチにも机にもなる台をめぐらすことに。

ハンモックと夏のベンチ

夏は、戸を全開にして机に食事を並べると、屋内に居ながらピクニックのように屋外の雰囲気を楽しめます

夏のお楽しみは、床下のハンモック。屋内の2本の柱も金具をつければハンモックをつるせるような幅と強度を持たせてあります

・夏と冬の快適性に配慮する

クーラーはありません。下界の酷暑を横目に、四方の窓を全開にして風を入れて。冬は床暖房と遮熱剤を贅沢に使うことで、外気温が-10℃を下回っても室内は快適に過ごせます。

・せっかくの温泉地なので、露天風呂も楽しみたい

露天風呂中房温泉から引いた原湯を豊富に使うことができます。
真冬に露天はちょっと辛いので、浴室にちょっと工夫を加えて、2方向のガラス戸を開放できるように。これで半身を外界にさらす感覚が楽しめます。

・家の中でいちばん値が張るバスタブ

バスタブと水栓

バスタブはイタリアのAGAPE社製 Spoon。ゆったりと体を伸ばし、お湯の中でぷかり浮力に身を任せます。水栓も同社の製品で揃えました。浴室内にも床暖房が入るので真冬でも快適です。浴室は十分以上の広さを確保してあるので、デッキチェアを持ち込んで湯疲れをいやすことができます。

・カウンターのアイランドテーブル、IH調理台

テーブルとIH別荘地であることを配慮して調理台はIH式。排気は。テーブルは大きく取ってあるので。ゆったり6人くらいまで食事を楽しめます。

冷蔵庫開閉カウンターの下にドイツAEG社製の冷蔵庫と冷凍庫。小さいけれどよく働きます。日本製でないので、懐かしい霜取り作業が必要ですが。壁には作り付けのストックスペースを、見栄えをスポイルしないように。

・深く落ちつけるように、間接照明・室内調光

調光窓の上、寝室、洗面の光は間接照明になっていて、ガラス戸の上は調光が可能です。夜は照明をうんと落として、ソファに体をあづけて音楽に浸りこむ、読書に集中を。

・荷物置き場にも、ごろ寝の場所にも

ロフト

壁に取り付けたはしごを掛ければ、意外に広い約18㎡のロフトに。五角形の床面にあわせて畳を加工して敷き詰めてあります。下の階に収まらない来客も、夏ならそのまま、冬でも布団を敷いてごろ寝ができます。

・洗面台は広々と、カウンターの下に洗濯機を

洗面引き戸2枚でプライバシーを確保できる洗面台は、サニタリーを広げられるよう。鏡も大きめのものに。カウンターの下にはドイツAEG社製の乾燥洗濯機を組み込んであります。

・ネコといっしょにトイレを

ネコトイレ+ロフトシャワレット付きの人間のトイレのわきに、ドア付きのネコのトイレスペースを用意しました。換気に配慮して感知式のファンがついています。階段を使ってロフトに上がり、途中の周り溝をネコが走り回れます。

・オーディオにも配慮

スピーカーケーブル電源とスピーカー設置部を結ぶ配線ケーブルは、床に通してあります。現在はBELDEN社製1810/Aが繋がっていますが、別のケーブルを通せるよう管の中にガードケーブルを納めてあります

・外と内のミックスゾーンとしての玄関

玄関とたたき
都会生活ではあまり必要ないかもしれませんが、泥付きの野菜、雪を載せたコートのように、田舎の生活では、「外には置けないけれど、室内に持ち込まれるのも困る」ものがあります。そういうときのために昔の家は玄関に三和土を置きました。残念ながら下地はコンクリートでありますが、玄関を広めに取って、ミックスゾーンとしての利便性を確保しました

■敷地はホテルも用意された別荘地内

ホテル別荘地としての管理がしっかりしているので、ゴミ出し、道路の雪かきも万全です。さらに徒歩圏内に『ホテルアンビエント安曇野』があるので、そちらの設備を利用することもできます。
ホテルについては、こちら

所在地: 長野県安曇野市穂高牧2230-137 710号地
竣工    2004年10月
敷地面積  1,128.99㎡
建築面積   78.64㎡
1階床面積   76.97㎡
小屋階床面積 17.94㎡

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