抗うつ薬が処方されたとき

身体へのヒント

医師が「うつ病」と診断すると、抗うつ薬を処方します。この抗うつ剤とはどのようなものなのでしょうか。

抗うつ薬の目的・効果

抗うつ薬の役割は、脳内環境の調整です。

うつ病は、親しい人との死別など、辛く悲しい出来事が引き金となって発症することが多いのですが、これを「その悲しみに耐えられないこころの弱さ」と考えてはいけません。そうではなく、悲しみが引き金となって「脳内の状態が正しく機能しなくなった」ことが原因です。

この失われたバランスを、脳内の神経伝達系に働きかけて、元に戻すことが抗うつ剤の目的です。

抗うつ薬の効果が現れるまで。基本的な服用期間

薬を服用した後、その効果が現れるまでには時聞が必要で、個人差はありますが、大体、1~2週間ぐらいかかります。また、薬の効果でうつ症状が消えたからといって、すぐに服用を止めると、脳内環境がまだ自力で調整できない状態のため、元のうつ状態に戻ってしまうリスクが高まります。

抗うつ薬は再発防止のためにも、しばらく飲み続ける必要があり、うつの症状が初めて出た時は、半年ぐらいを目安として服用します。うつの症状が何回か再発してしまった人の場合は、より長期間の服用が必要となります。

主な抗うつ薬の種類

抗うつ薬は、うつ病の原因と考えられている脳内の「神経伝達系(セロトニン、ノルアドレナリン系)」に作用し、これらを正しく機能させるよう働きます。

その化学構造、作用機序によって「三環系」「四環系」「SSRI」「SNRI」「NaSSA」と呼ばれる5つのグループに分類されます。

この5つはこの順番で開発され、新しく開発された薬ほど、脳内のターゲットにより選択的に作用するので、効果が高く、副作用が少なくなります。

しかし、薬は必ずしも新しければ新しいほどいいというわけでもありません。
昔からある薬は、新しい薬と比べて値段が安く、また、薬との相性には個人差があるので、人によっては新しい薬より昔からの薬の方がよく効くという場合もあります。

抗うつ薬の副作用

抗うつ薬には、よく誤解されているような依存性はありません。

しかしながら、脳内のターゲットとする神経伝達系だけではない、他の神経系にも作用してしまうため、副作用があります。代表的な副作用は次の通りです。

口が渇く
便秘・排尿障害
眠気
胃腸障害
頭痛

その他、抗うつ薬の投与早期や増量時には、不安、焦燥、衝動性が高まることがみられることもあります。

副作用の発現は、個人的要因(投与量・年齢・性別・健康状態・薬物の代謝機能・薬物への感受性・他のこころの病気の有無など)が複雑に影響するため、個人差が大きいことにも留意が必要です。

主な抗うつ薬一覧

左側は一般名で、()内は商品名。処方時には ()内の商品名が使用されることが多いです。

三環系
アモキサピン (アモキサン)
ノルトリプチリン (ノリトレン)
アミトリプチリン (トリプタノール)
トリミプラミン (スルモンチール)
イミプラミン (イミドール、トフラニール)
クロミプラミン (アナフラニール)
ドスレピン (プロチアデン)
ロフェプラミン (アンプリット)

四環系
マプロチリン (ルジオミール)
セチプチリン (テシプール)
ミアンセリン (テトラミド)

SSRI
フルボキサミン (デプロメール、ルボックス)
パロキセチン (パキシル)
セルトラリン (ジェイゾロフト)
エスシタロプラム (レクサプロ)

SNRI
ミルナシプラン (トレドミン)
デュロキセチン (サインバルタ)

NaSSA
ミルタザピン (リフレックス、レメロン)

以上のリストのなかから、実際にどの抗うつ薬が使用されるかは、個人個人の症状に応じて医師が決定します。