肩こり・腰痛の鍼灸:3  外国人は肩がこらないって本当ですか

身体へのヒント

「肩こりは日本人だけだ」とか「英語で肩こりにあたる言葉はない」などという人がいます。確かに、欧米では「肩こり」が大きく喧伝されることは少ないようです。

かつては日本人の食糧事情に、その後はストレスの高い社会性に、その原因が求められたりしましたが、どうやら欧米人が肩こりにならないわけではなく、「日本人は肩こりを強く訴える」傾向が強い、ということろが真相のようです。

これはどういうことなのでしょうか。

「病気」または「不健康」とされるものには、各国の文化的な差があり、同じ発痛程度であっても、ある国では大変な不快に、別の国では無視されるということがあるようです。
日本人は、頚や肩回りの不快な感触に、とくに敏感であるということかもしれません。

例えば癌や血栓のように、どの人種、どの文化に属する人でも明らかな病的症状が起こるのではなく、肩こりは、強く意識する人には病的症状となり、意識しない人にはそうはならない、というもののようです。

実際に臨床の現場でも、必ずしも「肩が張っている人=肩こりが強い人」というわけではありません。「ひどくがちがちなのに一向に気にならない」という方がいらっしゃる一方、さほど張りがないのに「辛くてたまらない」という方も。

このような現象は、われわれ東洋医学の立場からみると、とても示唆的です。

というのも、われわれは、発痛因子があってもそれに耐えられる体の力を持つことで病症を抑えられるのであれば、身体の力を高めることで病症を消せるのと考えるからです。

簡単にいうと、病因を無くすことではなく、病因に耐える力を体に与えることが、本質的な対策であるという考え方です。

さらに俗っぽくいうと「揉むのは肩こりの施術ではない」ということになります。