鍼灸は、目の病気に効果があるのでしょうか

身体へのヒント

※本章の記述は、神奈川県藤沢市「秋英堂治療院」金本貴行先生の研究実績に元ずくものです。詳しくは先生のホームページをご参考ください。こちらから

また文責は辻本にあります。金本先生の論説との間に齟齬があった場合の責任は、辻本にあります。

失明の可能性を持つ重篤な眼病を、その患者数上位から挙げていくと、以下のようになります。これら4つの疾患が全体の8~9割を占めるといわれています。

(1) 緑内障
(2) 糖尿病網膜症
(3) 網膜色素変性症
(4) 黄斑変性症

上記4つの病症の施術方針はいずれも、「目の病症の対策」と「それを引き起こす身体状態の不良の改善」の2本立てで行います。

「それを引き起こす身体状態の不良の改善」については、東洋医学全般的な考え方によりますので、こちらを参考ください。

ここでは「目の病症の対策」について、病気の概要・鍼灸の方針・成果の印象について説明します。

「目の病症の対策」について

目の支障の施術手段を「明目(めいもく)」と呼び、具体的には以下のツボを使って施術を行います。

攅竹・太陽・四白・風池・天柱・合谷・太衝・肝兪

これらは目の充血/眼瞼麻痺/夜盲/視力低下などの症状に効果が期待されます。
目に対する鍼の効果では、即効性が期待できます。

医療学的統計資料を持ち合わせていないので、印象論になってしまいますが、上記の疾患ではいずれも、鍼を開始して早急に、視力や視野の改善が期待されます。
つまり、多くない回数の施術を試みて、さらに施術を続けるかどうかの判断が可能になります。

鍼灸に専心するのでなく、眼科と合わせて対策いただくことをお勧めいたします。薬物による療法と相乗的な効果が期待できるからです。
また医院では、各種検査が受けられることが重要です。眼圧・視野など、施術の成果を具体的に確認することで、より有効な方針や目的を決定できます。

上記4つの病症いずれも「明目」施術を行ったうえで、それぞれに対応した施術を行います。ご参考まで、東洋医学的見地から行う分類例について挙げておきます。

(1) 緑内障

視力低下、視野欠損が起こります。
高い眼圧を原因とする疾患と理解されていましたが、正常範囲の眼圧でも病症を持つ患者さんがいらっしゃり、複雑な病態を示します。典型的には以下の3つに分類して対処します。

・肝腎陰虚タイプ
ほてり、暑がり、頬が赤い、煩躁(挙措に落ち着きがない)、目の乾燥
※ 正常眼圧の方に多いように思えます。一番数が多く、年配に多い

・肝気鬱結タイプ
イライラする、肩がこる、頭痛、目脹
※ ストレスなどによって眼圧が大きく変化する傾向があり。30代に多い

・脾気虚タイプ
体格が細い、声が小さい、軟便・下痢
※ 眼圧が正常か、低い場合もあり。30代に多い

(2) 糖尿病網膜症

眼底出血により視力が低下し、視界に黒い異物が映ります。
糖尿病の合併症として現れる病症です。以下の3つに分類して対処します。

・瘀血タイプ
高血圧・高脂肪症に多い。手足のしびれ、筋肉・関節の痛み
※ 体内に悪性物質化した血(液)が存在ます。これを取り除きます

・脾虚内湿タイプ
体はぶよぶよなのに手足はそれ程でもない、むくみがある
※ 体内に悪性物質化した水分が存在ます。これを取り除きます

・気陰両虚タイプ
疲れやすい、不自然な汗をかく、食べても太らない

(3) 網膜色素変性症
進行的に視野を失います。発症年齢と関係なく網膜が劣化していきます。
残念ながら難病ですが、鍼灸を加えることで、視力の維持・深化防止の可能性があります。

・肝腎精血不足や脾気虚タイプ
※ 身体機能を正常に動かすためのエネルギーが不足しています。これを補い、作る力を賦活します

(4) 黄斑変性症
目の中の黄斑部が変形したために、物が歪んで見えます。

・肝腎陰虚タイプ
ほてり、暑がり、頬が赤い、煩躁(挙措に落ち着きがない)、目の乾燥
※ 黄斑部が委縮したために起こります

・脾気虚(瘀血)タイプ
体格が細い、声が小さい、軟便・下痢
※ 黄斑部に浮腫ができたり出血したために起こります

・肝気鬱結(瘀血)タイプ
イライラする、肩がこる、頭痛、不眠
※ 黄斑部に浮腫ができたり出血したために起こります

ここに解説したものには難病指定のものもありますが、病症の深化を防ぐ可能性もありますので、ぜひご相談いただければと思います。

最後に、金本先生の症例報告の資料写真を、参考までに掲載いたします。

※ クリックすると拡大します。

1-緑内障 250×188

2-網膜色素変性 250×188

3-黄斑変性 250×188